2007年9月10日月曜日

“おせん”はアンチ”美味しんぼ”か?

 “おせん”は講談社のイブニングで連載されているきくち正太氏の描くグルメ漫画です(当初はモーニング連載)。読むようになったきっかけは2巻の芽茶と鰹節と醤油と山葵のみのシンプルなお茶漬けの話をコンビニで読んからで、それ以来単行本を集めています。この作品は料理や骨董などの作者の趣味を大いに盛り込みながら、和のこころを通して描いています。“おせん”の特に3巻のいくつかのエピソードに明確に”美味しんぼ”のエピソードに出てくる雁屋氏の主張に対する反対意見が散見されます。”美味しんぼ”を意識した上での作者(きくち正太)の主張であることは間違いないと思います。

どちらも北大路魯山人をモデルとする人物が出てきます。

美味しんぼ:書家、陶芸家、美食倶楽部(魯山人の美食倶楽部がモデル、星岡茶寮は岡星さんの苗字で出てくる)の経営者である海原雄山。雄山の初期のエピソードでの血のソースで鴨を食べさせる店でわさび醤油で食べる話は魯山人が実際にパリのトゥール ダルジャン(ミシュランで三ツ星の名店だった)でやったエピソード。

おせん:一升庵の女主人である半田仙(おせん)を木工、陶芸、料理すべて超一流の腕の和の総合演出家、女魯山人として描いている。 


カツオについて

美味しんぼ:本当に美味しいのは初夏の初鰹ではなく、脂の乗った冬の戻り鰹

おせん:初鰹のさっぱりしたあか抜けた味をカラシと酢醤油で喰うのが本当の魚食いであり、江戸の粋

あらい

美味しんぼ:鯛ふじのジェフのエピソードで、水に浸せば魚の旨みが逃げてしまうので包丁で氷を削り、それで冷やすことが洗いの最高の料理法

おせん:あらいは製氷機のない時代からある調理法、脂の強いスズキを井戸水で洗うことにより脂と生臭さを取り除き、さっぱりした旨みを水とともに味わうもの。さっぱりとあか抜けた味わいの五白(白米、豆腐、大根、白身魚、白魚)にこだわったものが江戸料理。


お米

美味しんぼ:至高のメニューと究極のメニューの対決でそれぞれとコシヒカリとササニシキが出てきます(それが日本でポピュラーな銘柄米というだけの理由みたいで説明なし?)

おせん:料理を引き立て、和食に合うのがササニシキ、洋食にあい、米自体でも旨いのがコシヒカリと2つの特性を分析しています(6巻)。


ハンバーグについて

美味しんぼ:9巻で元美食倶楽部の料理人が赤身の最上級の肉で作ったハンバーグ、無農薬の野菜でハンバーガーを作りました。これはハンバーグが旨過ぎて全体の調和を乱してしまうという山岡さんのアドバイスからパンを全粒粉で作り、最後には海原雄山すら納得させます。

おせん:8巻で外国人の娘のスージーが作った最高級(松阪牛)の肉の最高の部位(霜降り)で作ったハンバーグにその父親は納得しません。一方、おせんは普通に食べてうまいところをわざわざミンチにしてハンバーグにすることを否定しています。おせんは様々な部位(ランプ、牛タン、上ミノ)を自分でミンチにしたハンバーグを作りスージーを納得させます。ハンバーグとは全ての肉を無駄なく使い切るという西洋人の食肉文化における"始末"の思想からきているものだと作者は言いたかったのだと思います。


山葵について

美味しんぼ:山葵は外側を剥いて鮫皮のおろしで細かくすりおろし、山葵の効きを良くするのが通。わさび田の所有者は、このやり方以外ではわさびを粗末にされた、こんな奴の家には娘を嫁にやれんとぶちキれます。

おせん:美味しんぼのやり方で自分で新鮮なスリオロシ?をする料理屋を否定しています。山葵は丸のまま墨を研ぐ要領で普通のおろしですりおろし、蓋をして香りを落ち着かせたものを良しとしています(2巻のお茶漬けのエピソード)

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2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

(^-^*)/コンチャ!

お腹が空いているときにJJさんのBlogを見たら食べたくなってきました。

食べることの好きなJJさんは、きっとお料理が上手なんでしょうね。ヽ(*’-^*)。

JJ さんのコメント...

 高校時代に自分用の夜食、明太子をいれた鍋焼きうどんとか、お味噌を塗った焼きお握りを作っていたのが原点かもしれません。
 至高のメニューの卵の黄身の味噌漬けを真似したことがありますが、ロウソクのような食感(ロウソクは食べたことないですが)でおいしくなかったです!